観光客の回遊性を高める「音体験」とは?

SOLUTION

「集客」の努力は「回遊性」で最大化する

イベントや展示会を企画する際は、「来場者数」が大きな評価指標として注目されます。しかし、企画を本当に実りあるものにするには、じつは来場者数を増やすだけでは不十分。それに加えて「いかに滞在時間を増やすか?」「そのために、いかに回遊性を高めるか?」がとても重要になります。会場内を巡り歩き、より多くの時間を過ごしてもらうことで、ビジネスチャンスが増えたり、来場者により多くの満足を提供できたり、いわゆる「コンバージョン」につながる可能性が拡大するというのがその理由です。

この「滞在時間」や「回遊性」を高めるというテーマは、イベントや展示会だけでなく「観光」にも当てはまります。

名所や話題のスポットはあるけれど、みんなそこだけ見て帰ってしまい、周辺の地域や店舗にお金を落としてくれない……。
そんなお悩み、ありませんか?
こういった問題を解決するためにも、「回遊」の仕掛けづくりは大きなカギになり得ます。

回遊性を高める「心理的な誘導」の仕掛けづくり

回遊性を、いかに高めるか?

ムラヤマでは、展示空間をデザインする際、壁や通路など物理的な導線設計に加え、心理的な誘導も重視しています。心理的な誘導とは、簡単に言うと「来場者が思わず行ってみたくなる・見てみたくなる」仕掛けづくりのことで、様々な演出や体験ストーリーによって来場者の行動をナビゲートします。
私たちは、この「心理的な誘導」という考え方を観光という分野にも応用し、観光客の回遊性を向上に役立つコンテンツを提供しています。

観光客の「回遊性向上」というと、ガイドによる街歩きツアーなどがすでに存在しています。しかし、こういった施策には人材確保や人件費の問題、好きな時に参加できないといったハードルがあります。

ムラヤマでは、このような従来のガイドツアーの発展型として、スマホアプリによる音声AR(拡張現実)ナビゲーションコンテンツを開発。ソニーが提供している『 Locatone™(ロケトーン) 』というサービスをベースに、独自のストーリーや体験者の心理を考慮した演出を掛け合わせることで、観光客の回遊性向上を実現します。

『 Locatone(ロケトーン) 』とは

Locatoneは、ソニーが開発したSound AR™(現実世界に仮想世界の音が混ざり合う新感覚の音響体験)を楽しむためのサービスです。
ツアーを開始し、マップ上にある特定のスポットを訪れると、位置情報に連動して自動的に音声や音楽が聞こえてきます。音を聴きながら街をめぐることで、街の新しい魅力や楽しみ方を発見することができます。
※「Sound AR」および「Locatone」はソニーグループ株式会社またはその関連会社の商標です。
>Locatone公式ホームページ

ケーススタディ:姫路城下街歩き『しろのおと』

ご存じの通り姫路城は世界遺産にも指定されている非常に大きな観光資源。しかし、多くの観光客は姫路城を見るだけですぐに別の街や地域へ移動してしまい、姫路の街で多くの時間を過ごしてくれない……という課題がありました。

そこでムラヤマでは、観光客の回遊性向上を目的として「Locatone」コンテンツ第1弾『しろのおと』を制作。2023年9月に開催された「特別版 お城EXPO in 姫路(ムラヤマ共催)」で一般公開しました。

『しろのおと』コンテンツ概要

過去から現代へ時を超えてきた姫路城の守り手“しろ”。あなたは“しろ”を過去に戻すため、姫路の街の各地に眠る歴史の音「音脈」を巡る旅に出る……。
姫路の街を舞台に、過去と未来が交錯。体験者は、スマホから流れる音声に導かれながら街の各所を巡り、姫路城を目指します。体験時間は約1時間。「音脈を集める」というミッションをクリアするごとに、知られざる姫路の歴史が一つずつ紐解かれていきます。

『しろのおと』は、姫路城下に点在する様々な歴史スポットを巡り歩く音声ARコンテンツ。ムラヤマでは、体験デザインのノウハウや心理的な誘導の仕掛けを盛り込みつつ、観光スポットの選定からストーリー構築、実際のコンテンツ制作までを手掛けました。

POINT 1:姫路城への興味をフックにした「コース設定」

「『しろのおと』を体験しながら城へ向かうことで、姫路城に対する興味や解像度を高める」という意図から、姫路城にゆかりの深い場所を中心にコースを設定。

体験者はこのコースを巡り歩くことで、城にまつわる数奇な歴史や、先人たちと城との逸話などに触れ、まるでタイムトリップのような非日常体験を味わうことになります。

POINT 2:過去と現在が交錯する「ストーリーづくり」

『しろのおと』は、過去から来たキャラクターとともに、城や街の歴史にまつわるストーリーが展開します。体験者は、このストーリーに身をゆだねることで、視覚では現在の街の姿をとらえながら、聴覚では歴史の息吹を感じる、という重層的な体験をすることになります。

姫路には様々な歴史が息づいていますが、パッと見ただけではその魅力に気づきづく、歴史的な価値を活かしきれていないというのが実状。しかし、このようなストーリーで体験を仕立てることで、現代的な街並みの中でも歴史的な情緒を味わうことが可能になりました。

POINT 3:体験者の心理に訴えかける「音声演出」

空間デザインにおける体験設計ではてメリハリや余白が非常に重要。緊張状態が続くと体験者が疲弊し、興味や意欲が低下してしまいます。街歩きの場合も同様で、体験者が「疲れる」「飽きる」「面倒になる」と、街歩きをやめてしまう可能性すらあります。

『しろのおと』では、音声演出によって体験者の気持ちの抑揚をコントロール。スポットへと向かう道中では歴史の風情を感じるBGMをさりげなく流しつつ、スポットが近づくと衣擦れの音や足音などでキャラクターたちの気配を感じさせ、いざ目的のスポットに付くとパッと場面が転換し物語が展開する……といった流れで、街を歩く心地よさや「先が気になって次へ次へと進みたくなる」感覚を演出しました。

「音声×ストーリー」が導く新たな旅を、全国各地に展開

「特別版 お城EXPO in 姫路」で初公開された『しろのおと』は好評を博し、私たちは大きな手ごたえを得ました。SNSを通じて『しろのおと』をおすすめする体験者なども見られたほか、姫路市の観光関係者からは「観光客だけでなく、コンベンションセンターへの訪問者などにもぜひ『しろのおと』をPRしたい」といった声もいただきました。

今後、ムラヤマでは『しろのおと』のスキームを様々な地域へ水平展開していく構想です。日本には数多くの城があり、お城ファンやお城マニアも多数存在します。観光客誘致におけるお城の可能性は、開催を重ねている「お城EXPO」ですでに明らか。お城が持つ集客力と『しろのおと』を掛け合わせることで、城を取り巻く街にも人の流れを導き、地元の活性化につなげていきたいと考えています。

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「音声」と「ご当地ならではのストーリー」によって回遊性を向上させるという手法は、城のみならず、様々な観光資源にも応用が可能。神社仏閣などの歴史的な観光資源はもちろん、自然や祭りなども街歩き体験のテーマになり得ます。ムラヤマではLocatoneの仕組みと独自のコンテンツ作りによって、地域に眠る様々な歴史や物語を掘り起こし、観光資源の魅力の最大化に貢献したいと考えています。

観光事業において「回遊性の向上」は今や必須の重要課題。ムラヤマでは、課題解決に向けて「なにを?どう伝えるか?」といったところから、新たな旅のストーリーを提供いたします。

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