「TOKYO DESIGNART 2023 」に、今回で7度目の出展となる、富士フイルムデザインセンターCLAYスタジオの企画「完成しないデザインスタジオ展」を訪問してきました。2023年5月に開設された新施設「FUJIFILM Createve Village」が今回の会場です。既にデザインセンターとして稼働しているオフィス空間を一般公開。建築、設備、オフィス内装、サインに至るまで、こだわりぬいた空間が「ナマ」で見られるという事で、始まる前から期待に胸が膨らみます。(今回の企画にも弊社デザイナーが、展示・空間演出の部分でコラボレーションさせていただきました。)
富士フイルムデザインセンターの新スタジオ「CLAY南青山」にお邪魔してきました。
開設の際に公開されていた施設の竣工写真から受けたモダンでクールな印象に加え、大きなガラスのカーテンウォール越しに見える人の姿や、外構の照明演出によって「温かみ」をも感じられる建築。まだ、これから中に入るという手前で既に興奮してしまいます。そして、気になる今回のコンセプトは…。
思わず「うぉっ!」と声を出してしまった。巨大なレコード&ジャケットの見附造作が来訪者をお出迎え。ジャケットには「FUJIFILM Creative Village」のアイソメ図がバランスよくレイアウトされ、今から向かう各フロアーのマップにもなっているデザイン?のようでした。注目は、レコード盤のセンターラベルにある「FUJIFILM Creative Village」の建設ストーリー。「SIDE A」「SIDE B」それぞれに書かれたステートメント。時に裏話的なものもあり、思わずニンマリしてしまう。
フロアーのいたるところに実物大のレコード&ジャケットが置かれていて、その場所で起こった?エピソードやデザインの拘りが「SIDE A」「SIDE B」に綴られている。見た人が、次の人のために「SIDE A」に戻しておこうと自然に思う、とても秀逸な手法と感じました。
ここから、ほんの少しだけですが順路に沿って目に飛び込んできた様子をご覧ください。
空中に浮かぶレコード盤のような展示台には新CLAYの構想やモックアップ、建設時に出た砂で作られたグラスなど、会話のきっかけとなる展示がさりげなく置かれていました。ここは来訪者とCLAYのデザイナーとの交流の場といった感じでした。
心地よい音楽が流れるここは、「本当に仕事する場所?」と思えてしまう。「ここはデザインをする場所」と思うと、腑に落ちました。
にぎやかなホールから通路に出ると、そこには地下鉄コンコースとも思える空間がありました。連続する暖色系の照明が印象的です。この照明器具もオリジナルデザインだそうです。
地下鉄の路線図のようなフロアーサイン。ここで働く方にはきっと必要ないサイン。でも空間には絶対必要なデザイン。
とどめは、設備ピットのマンホールの蓋。
視界に入る全ての箇所に研ぎ澄まされたオリジナルデザインが施されている「FUJIFILM Creative Village」。「デザイナーはここまで拘っていいんだ」と、今回はこれまで以上に良い刺激を受けた企画でした。また、機会があれば実際に担当したデザイナーの皆さんに色々聞いてみたいと思います。一言で言い表すことが出来ませんが、私にとってはとても落ち着く大好きな空間でした。
photo : 山ノ内舞夕(展示デザイン担当)・中村津美紀
text : 岩崎浩明