相撲の聖地「国技館」。
伝統が息づく場所であり、他に類をみないこの空間をもっと多くの人に活用していただきたい。 そんな想いを受けて、現在、ムラヤマでは国技館のWEBサイト構築を進めています。
相撲の聖地「国技館」。
伝統が息づく場所であり、他に類をみないこの空間をもっと多くの人に活用していただきたい。 そんな想いを受けて、現在、ムラヤマでは国技館のWEBサイト構築を進めています。
これまでムラヤマでは、国技館で開催される様々なイベントに携わってきました。そんなご縁の中から「国技館をもっと利用してもらいたい」「そのためにパンフレットを刷新したい」というお話をうかがい、パンフレットではなく、今の時代に合わせたWEBサイトのリニューアルを提案。WEBサイトという新たなフィールドへの挑戦がスタートしました。
WEBサイトの構築はムラヤマにとって初めての取り組みですが、プロジェクトの主担当である寺田は「登場人物の関係性をデザインするということに関しては、リアルもバーチャルも基本的に同じ」と語ります。
寺田:「情報を伝えたい人」、「情報を探している人」、そして、その仲立ちをする私たち「作り手」。私はいつもこの3者のバランスが大事だと考えていて、WEBサイトの構築も同じ観点で取り組んでいます。もちろん技術的なところは私たちだけでは難しい部分もあるので、そこに関してはWEBサイトの企画・制作としてSONICJAMにパートナーとして参画いただき、体制を整えています。
プロジェクトが目指すのは「利用促進」。そのゴールを見据え、制作チームは、まず「情報を探している人」、つまり「国技館利用を検討している人」の立場になって課題を明らかにすることから着手しました。
寺田:最初に気になったのはサイトの構造です。既存の国技館ページは相撲協会の公式サイトの一部になっていて、極めて情報が少なく、文字情報が主体なため、借りる側が会場をイメージしづらいという印象を持ちました。
ユーザー視点で見えてきた、適切な情報提供が出来ていないという現状。その次に取り組んだのは「情報を伝えたい人」の課題を掘り起こすこと。
寺田:ここに関しては私たちの想像力では限界があるので、お客様自身にお話しいただく必要があります。そこで、より深い話を知りたい、みなさんにも主体的にプロジェクトにご参加いただきたいという想いから、ワークショップ形式でご意見を集めることにしました。会場を管理する営繕部の方々とともに、それぞれの想いや考えを話し合ったのですが、結果的に、これがその後に繋がる大きなヒントになりました。特に「闘技場からの脱却」というご意見は、非常に重要なキーワードでした。
miroを活用しながら、WSで出た意見の整理と課題の抽出を進めていった。
ワークショップは、漠然と頭にある様々な想いや考えを顕在化・言語化するプロセス。対話を通じて、一般的には知られていない国技館の魅力や強み、運営上の事情、多目的ホールとしての展望など、多くのことが明らかになったそうです。
制作チームでは、さらにそこから「どのような情報・機能を提供すべきか」を抽出。WEBサイトの考え方や在り方へと落とし込み、国技館WEBサイトの理想像を構想していきます。
寺田:大きく二つの軸があり、一つは「基本情報の提示」。すでに「借りてみようかな」と思っている人に対して、スペックや実績などの貸館に至る必要十分な情報をしっかり伝えようということです。もう一つは「提供価値の訴求」。国技館には様々な魅力があるのですが、現状では「知る人ぞ知る」という域にとどまっているものも多いので、それらの価値を「見える化」しよう、そうすることで「借りてみたい」という気持ちを高めようということです。国技館を選ぶ決め手を提供すると言ってもいいかもしれません。
ほかのどこでもなく、あえて国技館を選ぶ決め手とは?国技館だからこその価値とは? 数多くの空間のデザインやプロデュースを手掛けてきた視点から見ると、国技館には絶対的に他とは異なる、たくさんの魅力や価値があるといいます。
寺田:国技館には、イベント会場としてとても多くの可能性を感じます。とても独特な雰囲気がある、本当に唯一無二の空間です。知れば知るほど、いろいろとおもしろいことができる場所だと感じます。
両国の防災拠点としての顔もありますし、本当にたくさんの価値を秘めた場所といえます。 国技館が持つイベント会場としてのポテンシャルや独自性には、空間デザイナーである寺田自身も、大いに興味を刺激されるとか。
寺田:相撲のイメージが強いからこそ、ギャップを活かすおもしろさがあるのではないかと思います。たとえば、国技館だから和風なイベントをやるのではなくて、あえてファッションショーの会場にしてみたり。もちろん相撲の聖地としての品格は大切ですけど、それを活かしつつアイデア次第でいろいろな化学反応が生み出せるはず。私自身も、機会があればイベントなどで提案してみたいですね。
一歩ずつ足元を確かめるように前進を続ける国技館WEBサイトプロジェクト。 丁寧で着実にプロセスを進める背景には、お客様の「納得感」を大切したいという想いがあります。
寺田:お客様はWEBやプロモーションのプロではないので、たとえば専門用語ばかりで説明しても実感が持てないと思います。ですから、できるかぎり丁寧に、進めていこうと心がけています。
現在、プロジェクトは設計フェーズの佳境に。より具体的にコンテンツやサイト設計を検討する段階に進んでいます。
寺田:私たちなりに国技館WEBサイトのあるべき姿を考えたものの、それが現実にマッチしていなければ机上の空論にすぎません。そういった観点から、お客様がより現実的な観点で判断ができるように、構成要素を落とし込んだモックアップを使って検討を重ねています。やはり理屈だけではなく、目に見えるものがあったほうが分かりやすく、納得しやすいと思っています。 それから、検討に当たってはコストも重要です。今後は、それぞれの機能やコンテンツがもたらす費用対効果なども意識しながら、最適なプランを模索していく予定です。
このようにして寺田をはじめとする制作チームが進行してきた本プロジェクトですが、設計フェーズが完了したら、いよいよ次は実制作・実装フェーズが待っています。
コンテンツ、デザイン、ユーザビリティなどのバランスを見極めながら、いかにしてユーザーフレンドリーで訴求力のあるWEBサイトを作っていけるのか。
本プロジェクトにご期待ください。 新しい国技館WEBサイトは、2022年春のオープン予定です。
リアルとバーチャルの新たな展開について、
寺田は「それぞれの場における重力の有無」を切り口に、考えを進めているといいます。
確かに、リアル空間でのデザインには重さや構造など物理的な条件があり、それがクリエイターの腕の見せ所でもあり制約となることも少なくありません。しかし、バーチャルなら物理的な制約にとらわれず、自由に発想することが可能です。
重力から解放された自由な環境で、どのようなアイデアを盛り込んでいけるか。制作チームでは、現在、様々な角度からアイデアを練っているそうです。
発想のプロセスやその成果については、後日、あらためてお伝えする予定です。
森 尚之 Naoyuki Mori
寺田忠勝 Tadakatsu Terada