見学ツアーに「旅」という物語を。「ANA Blue Base Tour」

SOLUTION Text by:松本聡

ANAブランドへの信頼と期待を高めるために。

2019年4月、ANAは最新鋭の設備を備えた日本最大級の訓練施設「ANA Blue Base」の正式運用を開始しました。施設内には空港や機内の環境が再現され、グランドスタッフ、客室乗務員、貨物スタッフ、グランドハンドリングスタッフ、整備士、運航乗務員など航空機運航に関わる様々な職種の訓練や教育が可能となっています。

「ANA Blue Base」は人材育成という目的だけでなく、ANAと一般のお客様との結びつきを高める、ブランディングやファンづくりの拠点としての役割も持っており、2021年からは一般向けの見学ツアー「ANA Blue Base Tour」もスタートしました。

ムラヤマは、この「ANA Blue Base Tour」の企画・制作・施工を担当。普段は目にすることのできない舞台裏への興味や好奇心をフックに、ANAブランドへの信頼や期待、共感を高める体験価値を生み出しました。

ANA Blue Base Tour

ANAグループの現役社員がナビゲートする見学ツアー。世界最新鋭の訓練機器や様々な職種のスタッフが実際に訓練する姿などをご覧いただけます。
「ANA Blue Base Tour」オフィシャルサイト

ムラヤマが手掛けた「ANA Blue Base Tour」のツアー開発は、「コンテンツ制作」と「世界観の演出」の二つに大別されます。コンテンツ制作に関してはアトラクション的な仕掛けなど、単なる施設見学とは一線を画する様々なアイデアを実現。その詳細は、ぜひ見学ツアーに参加して体験していただきたい……。ということで今回の記事では、コンテンツの魅力を最大化するための「世界観の演出」についてご紹介します。

みなさんもご存知の通り、ANAは「安全・安心で快適な旅」を提供するブランドであり、 今回のプロジェクトは、そのANAがはじめて一般に公開するブランドコミュニケーション施設となります。
ムラヤマは、この施設の見学ツアーを開発するにあたって「旅」というコンセプトを設定。エントランスからお土産コーナーに至るまで、一連の体験を「旅」というストーリー・世界観に沿って構築することで、見学者の期待や興味をふくらませ、ANAブランドとのエンゲージメントを高めることを目指しました。

来場者の気持ちの移り変わりをデザインした「ユーザーエクスペリエンスマップ」。見学ツアーの魅力を最大化することはもちろん、ツアー終了後に「ANAで旅したい!」と思っていただくまでをゴールにしています。

空港のワクワク感を演出するアンビエントデザイン

見学ツアーもANAが提供する旅の一つである。そんな発想のもと、「空港」をモチーフにして見学コース全体の空間を構築。施設に足を踏み入れた瞬間から、見学者のマインドを一気に旅モードへといざないます。

写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎

エントランスには、グラフィックや立体造形に加え、実は音による演出も。空港独特のざわめきやアナウンスをBGMとして流すことで、空港ならではのアンビエント(雰囲気)を再現しています。

写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎

エントランスの背景には、ANAの創業以来の歩みを描いたアニメーション映像が流れます。ワンカットでゆったりと展開する映像は、まるで大きな飛行機が窓の外を横切るような感覚。ANAの歴史を伝えるコンテンツであると同時に、空港らしいアンビエントを生み出す演出でもあります。

ヒストリー映像を一般公開

エントランスで流れるヒストリー映像はその内容を高くご評価いただき、ANAスタッフの社内研修でも使用されるようになりました。さらに、社員のみなさんから寄せられた「お客様にも見ていただきたい」というご意見を受け、2022年9月から2023年3月までANAの機内で一般公開されることに。

荷物を預けるロッカーには、番号だけではなく世界各国の空港コードが。こういった小さな遊び心も、旅マインドをくすぐる環境演出といえます。

ブランドの世界観を表現するグラフィック演出

ANAのコーポレートカラーである「トリトンブルー」と「モヒカンブルー」を基調にしたグラフィックで、空港や機内の様子を再現。訓練施設という特殊な環境下において、ANAならではのブランド空間を構築しました。

写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎

空港をモチーフにトリトンブルーで染められた空間デザイン。実はカラーリングに加えて、もう一つ、ANAらしさを演出する仕掛けが……。

ANAらしさを演出する、もう一つの工夫。それが、壁面や調度品など見学コースの随所にちりばめられた斜めのライン。これらはすべてロゴマークに描かれた尾翼と同じ角度(60度)に統一されています。

写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎
写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎
写真撮影:J-LIGHTS / 板村光一郎

スタッフの想いを伝えるコミュニケーション演出

見るだけでなく、ANAのスタッフが大切にする「安全・安心で快適な旅」への想いも伝えたい。本来であれば実際に対話することが一番ですが、訓練中はそうもいきません。そこで、現場で働く様々なスタッフが実際に出演する訓練解説映像を制作。ツアーナビゲーターが解説するだけでなく、スタッフ自身が見学者に直接語りかけるような演出も盛り込むことで、ANAブランドらしい“人を感じる”コミュニケーション体験を提供しています。

俳優ではなく現役スタッフのみなさんにご登場いただくことで、ANAの社員一人ひとりの気持ちや温度までも伝わる映像に。

映像の制作にあたっては、各職種の関係者へのインタビューを重ね、何度となくシナリオを検討。緻密な演出により、見学者との心理的な距理が縮まる仕上がりを目指しました。

ここでの体験を、大切な思い出に。

見学コースの最後に設けられたお土産コーナーにも、ムラヤマのアイデアが盛り込まれています。見学という旅を通じて得られた感動や気づきを「持って帰る」「誰かと共有する」というコンセプトを提案し、実際のアイテム制作の監修も担当。空間を通じて価値ある体験を生み出すことはもちろん、その思い出がずっと心に残り続けるような仕掛けづくりもサポートしています。

CONTACT US

製品やサービスが生まれるプロセスを一般公開するだけでなく、そこにストーリー性を付加することで体験価値を高める。そしてその結果として、お客様と企業とエンゲージメントをより深くする。ムラヤマでは、こういったブランディング的な観点に基づいて、多くの施設見学プロジェクトを手掛けてきました。
空間構築に加え、コンテンツ開発や体験プランの企画、運営に関してもサポートが可能。BtoCおよびBtoBの分野でも、ニーズやターゲットに合わせてお客様の価値が最大限に伝わる施設見学をデザインします。

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